真空管を差し替えて音の違いを遊ぶ。「たま転がし」と言うらしい。
友人N から「300Bを差し替えたらフィラメントが点燈しなくなった」というので持込みで修理依頼
がきた。
アンプはトライオードの300B パラレル・
シングルアンプ。
修理するまでもなく原因はすぐに分かった。
真空管を挿す向きが違っていた。300B の
4ピンUXソケットは向きを間違ってもささ
ってしまう。
正しい方向にしたらフィラメントは点燈した。
ところが問題はここからだった。
真空管の自己バイアスと固定バイアス。
友人N は「ハムノイズが出るのでボリュームを廻した」という。どのボリューム(以下VR)を廻した
かと聞いたら、なんとバイアス調整用のVRを回していた。
これが内部の写真。回路図はないがシングル
アンプなので大体の見当はつく。
真ん中の2つがハムバランサーのVR。
右の基板上の青色の小さいのがバイアス調整。基板の左に縦2列に並んでいるのがバイアス調
整用の抵抗(茶・黒・黒・金)1Ω
プレート電流を測定すると、1本は72mAでもう1本は90mAを超えていた。B電圧は430Vぐらいだっ
たので90mAの方は最大プレート損失ギリギリ。真空管はタフですのですぐに壊れることはなくても長
期使用は良くありません。
図面・説明書がないので正確な数値は分からないが、2本のプレート電流を72mAに合わせた。
実はこれで完了ではない。上の写真にもあるように 300B の真空管は2本しか持ってきていなかった。
調整は挿す真空管を決めて個別に調整するもので、安易な差し替えはもちろん左右を入れ替えてもいけ
ない。今回は取りあえず完了という程度。
シロートの真空管アンプ使用者に警告!
1. 自己バイアスと固定バイアスの意味が分からなければタマ転がしはしない方が良い。
2. 特に固定バイアスの時はタマ転がしをしない方が良い。
友人N には「このアンプは球の差し替えを安易にしないこと。差し替えたらその都度バイアス調整と
ハムバランサーの調整をすること」を伝えて修理完了とした。
偉そうに書いていますが、ラックスのアンプで球転がしのあげく出力トランスを焼いてしまったブロ
グを読んだことがあります。