実家から大昔の古本を回収して、暇にまかせてポツポツと目を通しているうちに面白い記事をみつけた。
「アンプとは水をあじわうようなもの」というタイトルがついた富田嘉和氏の記事。(ラジオ技術 1977-9月号:144頁)
真空管ではなくて半導体の作者だったので読み飛ばしていたのか読んだ記憶がない。
富田嘉和氏の記事で興味をひいたのは、アンプを水にたとえて、「水の追求、つまりアンプの音質の追求に欠かせないものは鋭敏な感受性、アンプの場合は音質の変化に敏感なスピーカ・システムでしょう」と書いている。
その条件は、「広帯域のシングル・コーンか中域の帯域の広い3wayが最も適している 」と。
富田氏はさらに、同じに作ったはずのアンプの音の違いはもとより、抵抗などの部品の違いを聞き分けられるようになったと書いてる。
タンノイ名人 H先生のこと
これも大昔になってしまった。タンノイを鳴らしている H先生と親交が深まり真空管アンプを造って遊んでいる内に、先生宅のタンノイを鳴らす真空管アンプの整流管を差し替えて音の違いに驚いた。
噂に聞いていた「真空管の音の違い」を始めて経験した貴重な体験だった。さらに、にわかには信じられないかもしれないがドライバートランスを巻いた製作者によって僅かに音の差があったこと。
この H先生宅での忘れられない体験と富田嘉和氏の意見とは少し違う。それはタンノイが同軸2Wayでクロスオーバー周波数が1KHzであること。
アンプの音の違いを鳴らし分ける経験をしたスピーカーにアルテックA7 があったが、これもクロスオーバー周波数は800Hzだった。いずれも中域のど真ん中にクロスオーバー周波数がある。つまり中域の帯域は広くない。
敏感なスピーカがある事は以前から思っていて、それは中・高域が高能率な、金属の振動板を持つコンプレッショんドライバーだと思っていた時期もあった。しかし、グッドマンやラウザーのフルレンジの評判を読むとそれも違う。
ラジオ技術誌にクオード22 の真空管アンプを発表していた三浦軍志氏は TQWT の箱に僅か10cmのフルレンジを使って真空管やコンデンサーの音の違いを聴き分けていた。
我が家のスピーカーは ディナウディオの2way。雰囲気の違いは分かるけれども部品の違いに敏感なスピーカーとは違う。(・・・と思う)
自分の駄耳を棚にあげて、それをスピーカーのせいにするのもどうかと思うが・・・というより「音質の変化に敏感な耳」というのも確かにある。
駄耳のおかげで音を聴くより音楽を聴く事を主にしたため、聴いた事がない音楽でもジャッキー・マクリーンが吹いているのだと分かる程度になったので全てが悪いのではないと思いながら振り出しに戻って、それでは「音質の変化に敏感なスピーカー」とは何だろう。